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クラリネットです。(ツヨデキ1-9)

何とか即時破門を回避でき、A田先生(仮名)のお宅に通う事を許可されやっと「受験」と言うものにまっすぐに向き合う事が出来ました。僕が本当の意味で死に物狂いでクラリネットに取り組んだ時期と言うのは恥ずかしながらあまり無く、この時が数少ない「真剣期」の初回でした。A田先生のお宅は最寄り駅から少し離れていたとは言え、お宅でレッスンの時には必ず先生かピアニストの奥様が車でお迎えに来てくださると言う、今考えると申し訳なくも有り難い待遇でした。

 

肝心のクラリネットですが、奏法が極端に変わり、自分でもうまく行っているのかどうなのかわからないまま毎日が過ぎました。うまくなれている実感があまり持てずに、いったい自分はちゃんと吹けるようになるのだろうか?と、世の受験生たちが追い込みをかけている時期に、まるで初心者のようにしか吹けない自分が悲しくなったりしましたが、A田先生のおっしゃる事に従うしか無いと思い、練習に打ち込みました。

 

そんな矢先、やはり同い年でA田先生に師事して大学受験の準備をしている女の子が、島根大学の推薦入試を受けるんだという話をA田先生より聞きました。

元々音楽科であろうと理学部であろうと(元は一応理学部志望のつもりでいました)、大学は国公立しかダメと言うように言われていたため、第一志望は恐れ多くもT京G大(を二年計画)で準備をしていました。が、もちろん他の大学の事も調べ、いくらかの国立大学の教育学部に、特設の音楽を勉強できる課程がある事もわかっていました。岡山から一番近かったのは島根大学で、僕の吹奏楽部の先輩が一人フルート専攻で、当時大学4年生として在籍していました。そして、最初に僕が憧れたクラリネット吹きである合符先生(仮名)も、まさにその島根大学でクラリネットを勉強されたと言う事がわかり、合符先生の先生がいらっしゃるなら、きっといい勉強が出来るんだろうなあ・・・などと思っていました。

 

その島根大学の特音課程で、6名位を採る推薦入試がセンター試験が行われるよりも前に実施されるという事がわかりました。入試は12月。11月の下旬には一次審査となる課題曲演奏を録音したテープを出願書類とともに大学に送ら無くてはならないという事でした。課題曲はWeber作曲のConcertino。当然吹けません。しかしA田先生は、本番ほどいい練習は無いので、絶対受からないけど出願しようとおっしゃいました。 

 

それから約半月は毎日Concertinoでした。そして、申し込み締め切りを約1週間後に控えたある夜、もう一人の島根大受験生のW辺さん(仮名)とともに、岡山市内で録音業を副業とされている写真家さんの事務所兼スタジオのようなマンションの一室を訪ねました。ここで、まだ通してConcertinoを吹けない僕の「編集」レコーディングが行われ、何時間もかかってやっとそれぞれの部分でのノーミスのテイクを録音し、それを見事な手さばきで写真家さんが繋げて一本のミスの無い僕のConcertinoの録音テープが出来上がりました。(なぜ「手さばき」かと言うと、当時はオープンリールテープでの録音で、絶妙なタイミングでハサミでテープを切り、それを貼り付けるとジャストタイミングで繋がっているという、手作業でのものであったからです)

 

写真家さんの見事な編集テープのおかげで一次試験は合格で、12月の最初の週末、僕は2学期末テストの2日目を休んで、特急「やくも」に乗って島根県松江市を目指しました。土曜日の午後に小論文と聴音、日曜日の午前が専攻実技で午後が面接という流れでした。小論文の練習というか勉強を全くした事が無かったので、試験でも清書が間に合いませんでした。聴音も緊張のあまり、合っている確信が無いまま提出の時間となりました。

 

そして次の日、実技試験です。もうジタバタしても仕方が無いので、早く演奏して終わらせたい一心で、早く呼ばれるように待機室でもわざわざ入り口の近くに座って、技官の人が呼びにくる度にジーっと見ていました。しかし、待機室の人がどんどん減っていっても一向に僕は呼ばれず、最後2人という所で僕じゃ無い方が呼ばれ、技官の人にも「あなた最後だったわね(笑)」と言われてしまう始末。もう12時半くらいになっており、審査する先生方もお腹が空いて機嫌悪いんじゃないかな・・・などと、やっと呼ばれて入った音出し室の中で考えていました。そして、いよいよ僕の番になり、試験会場の中に入りました。

 

中には8人くらいの「人」がいるのであろうという事しか確認できませんでした。多分人生で一番緊張した瞬間で、ホントに8個くらいの物体があるというようにしか見えませんでした。もうどうにでもなれという気持ちで吹き始めました。すると・・・あれ?間違わない!(レベル低い話です)吹ける吹ける・・・という感じで一度もちゃんと吹けたためしの無い課題曲のConcertinoがどんどん進み、ある程度(想定内)の所で止められ、自由曲をとの指示があったので、Roseの32のエチュードの1番(しか吹けなかったので選択)をゆっくり目のテンポで(とA田先生からアドバイスされていた)演奏しました。どうしちゃったんだろう?ちゃんと吹けてるなあと思っていたら、8個ほどあった物体が人間のように見えてきて、しかも、真剣に、結構いい表情をして、僕の演奏を聴いているのがわかってきました。少し楽しくなった頃、短いエチュードは終わり、お辞儀をして部屋を出ました。

 

面接では音楽の事は全く聞かれず、内申書に書いてあった「空手有段者」という所に何故か質問が集中しました。面接を終え、また「やくも」に乗って、岡山の家に帰りました。

 

それから5日後、奇跡が起きて僕はたった3ヶ月間の受験生生活を終えてしまいました。これが、もう後戻りできない、どんなヤクザな道の始まりであるかなんて、受験に合格したばかりで浮かれる18歳の少年には想像も出来ませんでした。

 

まずはA田先生に合格の報告の電話をし、さすがに驚かれましたが、一番お荷物だと思われていた(多分)僕が片付いたので、ホッとされていたに違いありません。そのあと学校に行き、まずは担任に報告。そして、音楽の先生の所へ行くと「いやそれは冗談じゃろ?」と。しばらく本当に信じてもらえませんでした。こんな事を冗談で言うはずは無いのに失礼な話ですが、よく考えればそれ位有り得ない話でもありました。一番おかしかったのは学年主任の先生で、僕は確か半年前にこの先生に「人見!!お前はラッパばっかり吹いとって(注:僕がトランペットを吹いていたわけではなく、区別のつかない人には吹く楽器はみなラッパ)全然勉強せん!ダメな奴じゃ~!!」と言われたのだが、そんな事はすっかり忘れ「人見、お前はエラいなあ。部活動もしっかり頑張って最後まで続け、いち早く大学も合格して」と。先生にはそれが大事なので仕方ありませんね。

 

ただ一人、高一の時の担任だったカレー屋先生(仮名)からだけは「お前、この選択は正しいんか?」と、お祝いではない言葉を頂きました。このカレー先生のお言葉の答えはまだ出ていませんが、大きく見れば間違っていなかったと僕は思っています。

 

以上で、このブログを始めるにあたっての自己紹介的シリーズ、ヒトミツヨシの出来かた(ツヨデキ)の第一章を終えます。第二章以降はまた気が向いたら書きます。あまり面白くないお話だったと思いますが、お付き合いくださり、どうもありがとうございました。

 

やっと大好きなビールや欧州サッカーについて書けます~~~!!

 

 

 

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ステージ上で餌でもねだっているのでしょうか?

4件のコメント(ありがとうございます!)

ミミ 2008年3月24日 06:52

いや~、おもしろかったよ!
人見くんの音楽を始めたきっかけが知れて。
続きも楽しみにしています。

Tsuyoshi Hitomi Author Profile Page 2008年3月24日 10:31

>ミミさん

駄文を読んでくれてどうもありがとう。続きは第1章よりもっと恥ずかしいので(笑)、もう少し開き直ってからじゃないと書けません!

riebe 2008年3月25日 23:13

長~い歴史、ちゃんと読ませて頂きました^^
審査に出したテープ、編集するのも有りなんだね(笑)
次はビールの話かな?
楽しみにしてます♪

Tsuyoshi Hitomi Author Profile Page 2008年3月26日 15:27

>riebeさん

歴史自体は、今回書いた部分はまだ全然短くって、この後の方がもっともっと長くて波乱たっぷり。
文をまとめる力が無いので、無駄に長かったんだけどね。

一発録りに限ると書かれてない限り、編集もOKです(笑)。

次は・・・やはりビールの話なのかな。クラリネットの話よりもきっと熱くなります(笑)。

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